死に至ることもある、ある病気について、WHOの基準で言えば日本はタンザニアやコンゴと同レベルの汚染地域である。南アフリカやナミビア、ボツワナのほうが2段階も進んだ対策がなされているのだ。
当然欧米諸国ではほとんど感染者が出ない「排除期」と呼ばれる状態になっていて、アメリカなどは年間10人程度しか患者が出ない。そして推定ではその患者はすべて日本から持ち込まれた原因によって感染したと推定されている。
そう聞いてどう思うだろう、「そんな馬鹿な」と思うのだろうか。日本は世界で最も進んだ先進国の一つであるはず、政治的・社会的なことならいざ知らず、医学で対応できるはずのことがそんな状態で放置されているはずがないと思うのは決して不自然ではない。
かつて日本には人生を決定づける2つの病気があった。それを「
命定め・見目定め」と呼んだのである。
見目定めとは既に地球上から撲滅された病気、
天然痘である。天然痘に感染し発病すると、治癒後も酷い痘痕(あばた)が顔に残ったことからこの名前が付いたのだそうだ。
そして
命定めとは
はしかのことである。かつてはしかは死亡率の高い病気であった。今でこそ脳炎や肺炎を併発して死に至ることは少なくなっているが、発病してしまうと
治療法がない。高熱や合併症に注意し、対症療法を行いながら
自然治癒を待つしかない病気なのだ。
日本が
WHOから汚染地域に指定されている病気とはこの「はしか」のことである。
なんだ、はしかのことか。あんなものは誰でも罹る物で、一度罹れば免疫ができるから気にすることはない。大人ならいざ知らず、子供が罹っても死ぬことはないのだから。若い時によくあることを「はしかのようなモノ」って言うじゃないか。
そう思った向きは、
あなた自身が日本を後進国にしていると自覚して貰いたい。
「はしかのようなモノ」とは「誰でも一度は罹る物」と言う意味では正解である。免疫を持たない人は感染性のある人と近づくだけで
90%以上が感染してしまうのだから。はしかの特徴である発疹が出る前から発疹が消えてしばらくまで患者は他の人に伝染させる力を持っている事も意外と知られていない。
はしかはワクチンで95%以上予防することが可能である。欧米諸国やアフリカでもMMR(新三種混合)ワクチンによって殆どが撲滅された。しかし、日本では80年代後半から90年代前半に発生したMMRワクチンの接種禍によって、現在も接種見合わせの状態が続いている。
はしか単独のワクチン接種についても存在していて、MMR見合わせ後も病院などは接種を受けるよう啓蒙活動を続けているものの、「はしかなどは誰でも罹るものだから」という意識がそれを遠ざけているようだ。その結果
毎年10万人以上のはしか患者を生み出し続けている。
確かに現在の日本でははしかで死ぬことは希であろう。年間20人から80人くらいの死者であるとの推計が出ているが、死亡率は数千人に一人、つまり0.1%以下といったレベルだ。
だからと言って放置しても良いのだろうか。副作用によって千人あまりに一人の割合で無菌性髄膜炎が発生するとされるMMRワクチンは使えないとしても、
はしかワクチンの予防接種は義務接種にするべきだろう。
先進国でありながら、アフリカの一部ですら撲滅間近までコントロールしている病気を国として放置しているようでは、海外から疾病の輸出国として非難を浴びていることは当然だ。
国連安保理の常任理事国入りを目指す話が喧しい昨今である。某アジアの国が妄言しているようなことは放置しておいても良いが、少なくとも
病気の輸出を放置しているようでは恥ずかしくて常任理事国どころの話ではないだろう。